君の声が聴こえないと不安になるんだ。 いつも隣で当たり前みたいに聴いてた、君のよく通る、でも優しい声。 でも今は、それが全然聴こえない。 まるで1人暗闇にいるみたいなんだ。 かわりに聴こえるのは・・・雨の音と・・・ 第一章「First impressionA」 森で倒れていた少女を保護し、一行は村の宿屋で休憩を取る為身を寄せていた。 幸い宿屋は人数分部屋が空いており、個々でゆっくり休むことができた。 ただ今夜だけは、皆自分に割り当てられた部屋には入らず、一つの部屋に集まっていた。 いまだベットで目を覚まさない少女を四人が囲むようにして、珍しく喧嘩も会話もなく時が過ぎていく。 唯一聞こえてくるのは、雨音だけ。 そんな中、一番にしびれを切らした悟浄が口を開いた。 「だぁーーーーーーーー!!もう何なんだよこの葬式みてぇな雰囲気はよ!!オイ猿、何かしゃべれって!!」 「悟浄、こういう時は静かにしているものですよ。眠っているのか気絶しているのかは分かりませんが、女性がベットにいるんですから。」 「猿でも分かることだろうが。お前は猿以下か。」 「あっらぁーそういえば三蔵サマ、先ほどはとっても素敵でしたわよ?まさか三蔵サマがお姫様抱っこなんて、ワタクシ思いもしませんでしたわぁ♪」 「・・・そのキモイ口調をいますぐやめんと撃ち殺すぞゴキブリ河童。」 「だぁーもう!!二人とも静かにしろよ!!起きちゃったらどうするんだよ!!」 「って悟空、起きてもらわないと困るんじゃないんですか?さすがにこのままというわけには・・・」 「あ、そっか、そうだよな。はは、うん、そうなんだよな・・・」 悟空のらしくない言葉を最後に、再び部屋に静かな空気が流れる。すると、悟空の様子を見かねた八戒が彼に尋ねた。 「ねぇ悟空。さっきこの子を保護した時、『知っているような気がする』って言ってましたよね?会った事があるんですか?」 「そういやお前、五行山に閉じ込められる前の記憶、ねーっつってたよなぁ?気のせいなんじゃねぇの?今まで通りかかった街ですれ違った子とか、宿屋の嬢ちゃんとか、もしかしたらナンパして振られたおねーちゃん、とかだったりしてな?」 「・・・っ、んなわけねーだろ、エロ河童と一緒にすんじゃねーよ!!」 「お、猿がいっちょ前にナマな口叩くじゃねーのよ。やるかコラ?」 「お前ら静かにしろ!!この雨の中死体にして放り出されてぇか!!」 「ははは、この二人なら死体にしても生きていそうですけどねぇ。」 無言の部屋にやっといつもの喧騒が戻った。ケンカを始めた悟浄と悟空、それを怒鳴る三蔵と笑顔で見守る八戒。だが悟空は、悟浄に顔をつねられながらも、ベットにいる少女に視線を向けていた。 すると、ベットの中の少女がそんな四人をよそに突然少し体を動かした。どうやら目を覚ましたようだ。 それに反応して、四人はいっせいに静止する。 少女が目をうつろに開けたまま、少し体を起こした。 「う・・・・・ん・・・」 「お、気がついたみたいだぜ。嬢ちゃん大丈夫・・・」 一番に声をかけたのは悟浄だったのだが、途中で声が止まってしまった。ゆっくり少女が体を起こして目を開ける。 少女が大きな目を少しずつ見開いた。ベットを囲んでいる四人を見つめる。 それに悟浄だけでなく、他の三人も息を呑んだ。 少女の瞳。 いままで見たこともないような、透き通るような藍色の瞳。それを見て、四人は視線を釘付けにされた。 まるで部屋のなかだけ、時間が止まってしまったような、流れる空気さえ外のものとは違うような気がしてくる。 その少女の瞳を見て、悟空が突然声を発した。その悟空の声に、他の三人もハッと我に還った。 「すっげーーーーーーぇ!!キレイーーーー!!」 「え!?」 そう言うと、悟空は起きたばかりの少女の手をしっかりと掴んで、まじまじと顔を見つめて話しかけた。 「スッゲーキレイな目ぇしてんな!!何色だろ、青・・・うーん違うな何だろ・・・でもとにかくキレイだ!!」 「えっ、ちょっと、あの・・・」 突然手を握られそんな殺し文句を連発され、少女は混乱する。すると、悟空の後ろからするりと長い足が伸びてきた。 悟浄の長い足が、少女の目の前にいた悟空の背中を蹴り倒す。 「オラ猿いいかげんどけよ。嬢ちゃん驚いてんじゃねーか。オレ様より先に触ってんじゃねーよ。」 「っ!?何すんだよこのゴキブリ河童!!いってーじゃねーか!!」 「いいからどけって、ココはガキの出る幕じゃねーのよ。君、大丈夫?怪我とかしてねぇ?可愛いね〜年いくつ?何であんなとこに倒れてたの?あ、もしかして何にも覚えてないとか・・・?だったら話ははえーや、オレと・・・」 「いやっ、あの、その・・・」 次に話しかけてきたのは赤い髪をした、いかにも軽い感じの男。しかも先ほどの少年よりも顔を近づけて迫ってくる。それに気をとられていると、ついには肩にまで手を回してきた。さすがに貞操の危機を感じざるを得ない。 すると今度は、何かでアタマを叩いたような気持ちのいい音が部屋中に響いた。 そのハリセンの持ち主は、金の髪をした美しい僧侶。だが、その美しい外見とは対照的に、口から発せられた言葉は乱暴なものだった。 さすがにそのギヤップに少女は目を丸くする。 「みさかいなく女に喰いついてんじゃねーよこの淫乱河童!!」 「〜〜〜このクソボーズ!!何しやがんだ、あぁ!!誰が淫乱だコラ!!」 「貴様以外に誰がいる?自覚さえしてねぇとはとんだ色ボケ河童だな。」 「あっら〜三蔵サマったら、もしかして妬いちゃったりしてるんじゃございませんこと?どっちが淫乱だよ、この淫乱なんちゃって坊主が!!」 「そうか、そんなに死にたいのならいますぐここで殺してやろう。無駄に二酸化炭素を吐くヤツが減って助かる。」 「二人とも、いいかげんにしてくださいよ。彼女、怯えてるじゃないですか。あの、大丈夫ですか?怪我はありませんか?」 「あ・・・・・怪我・・・?・・・!?そうだっ、怪我!!っ!!」 「えっ?」 大きな目をさらに大きく見開いて、少女が近づいて話しかけてきた八戒の肩を思い切り掴んで問いかけた。 彼女の変貌ぶりに、さすがの八戒も驚く。 その様子を見て、他の三人も押し黙った。 「っ、を知らない!?」 「?」 「ココに来てるハズなの!!えっと・・・なんて言ったらいいんだろう、あたしの幼馴染で、あたしくらいの年の女の子で、髪はちょっとくせっ毛で、でも童顔だから同い年には見えないかもしれない・・・ってか絶対見えないけど!!ええと、それから・・・」 「ちょっ、ちょっと落ち着いてください!!」 「ああ、もうあのバカ!!いっつもいっつも変なことに巻き込まれてるから・・・ドコ行ったんだよもう・・・怪我してなきゃいいけど・・・」 八戒の言葉など全く聞こえていないのだろう。少女はかなり混乱しているようだ。 だがさすがは八戒。上手く彼女を落ち着かせようとする、やはりこういう役は八戒が適任だ。 「あの、状況はまだよく飲み込めませんが・・・何かお困りなら僕らでよければ力になりますよ?落ち着いてゆっくり話してみてくれませんか?そうだ、気持ちを落ち着かせる為に暖かいお茶なんかいかがですか?美味しいですよ♪」 「あ、ありがとう・・・ございます・・・」 八戒の優しい言葉に、少女は少し微笑んだ。八戒が、部屋に備え付けの小さなキッチンへ湯を沸かしに行こうとしたその時、突然彼女の様子を八戒の後ろから見ていた三蔵が彼女にドスのきいた低い声で詰め寄った。 「オイ、お前に聞きたいことがある。さっきお前が体中にまとっていた赤い光はなんだ?なぜあんな森で1人で倒れていた?ドコから来た?お前は一体何者だ?答えろ。」 「え?いや、何者って言われても・・・あたしはただの高校生だし、光って・・・何のこと?」 「・・・チッ、いいから答えろ!!お前は誰だ!?」 三蔵が無理矢理少女の左腕を掴む。少女は一番身の危険を感じた。 「やっ、いきなり何!?離して!!」 「三蔵!!何襲ってんだよ!!イヤがってるじゃん!!」 「うっわ、なんっつー珍しい光景だよ・・・三蔵が女に迫ってやがる・・・」 「悟浄!!感心してないで三蔵を止めてください!!悟空も、早く!!」 「もうっ・・・いいかげんに・・・離せって言ってんだろーがこのクソ坊主っ!!」 「え!?」 思わず止めようとしていた三人の声が重なる。その瞬間、少女は三蔵に掴まれていた左腕を瞬時に離し、逆に彼の右手首を掴んだ。 そして一気に彼を自分が先ほどまでいたベットに押し倒し、少女の右手は彼の肩をしっかり掴み、三蔵は身動きが全く取れない状態に陥った。 形成逆転とはまさにこのこと。 少女は先ほど悟浄に迫られたことを三蔵に返すかのように、顔を彼に近づけてこう言った。 「っつ・・・貴様・・・なにしやがる!!どけ!!上に乗っかるんじゃねぇ!!」 「それはコッチのセリフだよお坊さん?さっきから何度も知らないって言ってんじゃん?なのにしつこいんだよアンタ、いいかげんにしてくれない?あたしにだって何でこんなトコにいるのか分からないんだから。ま、名前くらいは覚えてるから教えてあげてもいいけど?」 「な・・・ん・・・だと・・・?」 するとさらに三蔵に顔を近づけて、彼の紫の瞳を睨みつける。ありえないその光景に、他の三人は息を呑んだ。 「あたしは。年は18、人に名前を聞くときは先に名乗るのが礼儀ってもんじゃないの?まさかお坊さんがこんな常識的なこと分からないわけじゃないよね?それとも、そこのゴキブリ触覚男が言うように『なんちゃって坊主』だったりするわけ?」 「なっ!?ゴキブリ触覚って・・・オレのことか!?」 「他に誰がいるっての?ちゃんと脳みそつまってる?それともそのアタマはただの飾り?」 三蔵に乗っかっていた体を起こし、そしてベットから離れ、悟浄の方を向いてはっきりとした口調で少女は話す。 大きく美しい藍色の瞳、肩より少し長い茶色かかった髪。が、その愛らしい外見からは全く想像できないような恐ろしい言葉が彼女から発せられて、一行は瞬きさえできないほど固まった。 そしてこの時、四人の脳裏に浮かんだのはただ一つ。 「コイツ、ただモノじゃねぇ・・・」 これが、彼らとの始まりだった。 -TO BE CONTINUE・・・ あとがき さてさて、書き終わって一言言わせていただいて宜しいでしょうかねぇ? スッゲームカつくんですけどこのヒロイン。 ヒネくれているにも程がある!!なんなんだこの女!!(笑)確かに三蔵を押し倒すってのは乙女の夢だけどさぁ!!(←やめとけ・・・) きぃーーーー言葉使い・・・悪すぎ。こんなんドリームって言えるのかコラ書いたヤツ出て来ーーーい!!(←だからお前やろ) もうホント、怒らないでくださいましファンの方・・・あわあわ(焦) ちなみに三蔵は別に襲ったわけではないのですよ?コレにもちゃんと理由が・・・(←いいかげんにしろよ・・・笑) ま、今後の彼女に期待してください。三蔵を押し倒すほどの力を持ってる理由とか明らかになるハズ、なんでね・・・(自信薄) ♪BGMはDo As Infinityの「We are.」しかないでしょう。 『与え合う出会いが 一番 宝物。』・・・まさにその通りだと思うんですよね。 |